アートの現場を耕す!創作体感ワークショップ(美術編)を実施しました

近年、障がいのある人たちの作品はさまざまな場所で展示されたり、企業とコラボレーションが行われたりと大きな広がりを見せています。その一方で、作品づくりや商品化が目的化し、”その人らしい表現”から離れてしまうのではないかという懸念も生まれています。
そこで、今回は障がいのある人の表現活動を支える福祉施設の職員や特別支援学校の先生などを対象に、「アートの現場を耕す!創作体感ワークショップ(美術編)」と題して、あらためて「表現とはなにか」という原点に立ち返るワークショップを実施しました。

講師は画家の大平由香理さん。各地で滞在制作をしながら、福祉施設や高齢者施設などでのワークショップ講師も務めています。はじめにご自身の活動を紹介しながら、各地でのワークショップでの経験や心がけていることなどのお話を伺いました。
大平さんが繰り返し仰っていたのはその人の表現を「否定しない」こと。講師としての心掛けとしても、場の雰囲気や環境としても、エラーや間違いといったものがそもそも生じないようにしているとのことで、たとえその場で絵を描いたりせず見ているだけの人に対しても、それもまたその人自身の在り方として、無理に描かせたりすることはありません。
また、ワークショップはその人の表現を引き出すきっかけづくりの場として捉えているため、「素材を変えること(立体↔︎平面、絵具↔︎鉛筆)」「大きさや形を変える(大きく↔︎小さく、四角↔︎丸)」「選択肢を増やす(いつも使わない画材、使い慣れた画材)」などあえて制約を設けたり、逆に選択肢をたくさん用意しておいたりするコツも教えていただきました。

その後はいよいよ実際に絵を描く時間です。この日は2月14日、バレンタインデーということで「キモチをカタチにしよう!」をテーマに床に広げた大きな紙に絵を描きます。

使う色は赤、ピンク、オレンジなどの暖色系のみとしました。「青や緑は?」という声もありましたが、あえて色数を制限することで、創意工夫が生まれるきっかけの一つになることもあるようです。
はじめはとにかく余白がなくなるくらい描いてみましょう、という指示だけでしたが、途中で大平さんから「右隣の人の場所に移ってみましょう」「両手を使って描いてみましょう」「丸だけを描いてみましょう」などと声がかかります。参加者のみなさんはその都度少し戸惑いながらも、いつもとは違う描き方に挑戦し、隣の人との境がなくなって、大きな絵になっていきました。みなさんがどんどん描き進めるので急遽もう一枚紙を用意したほどでした。

最後に全員で会場を回りながらお互いの作品を鑑賞して前半のワークは終了です。

後半のはじめは個人ワークの時間。A5サイズの小さな画用紙を使って前半と同じく「キモチ」を形にしていきます。

前半と違い、今回は寒色系の色も用意しています。またハサミや糊、マスキングテープなどの道具もあり、切ったり貼ったりも自由に制作しました。
無心に何枚も描き進める人もいれば、気持ちを表現するのが難しい人も。大平さんは参加者の様子を見ながら声掛けをされていました。

次に「キモチ」をみんなで共有するため、前半ワークで描いた大きな絵にそれぞれが描いた絵を貼り付けていきます。全員で描いた絵と個々人が描いた絵が溶け合って、作品の表情が変わっていきます。

それぞれが描いて貼り終わった作品をお互いに鑑賞したあとは、描いた人の「キモチ」を想像して、付箋に描いて絵の横に貼っていきました。

同じ作品を見てもそれぞれに感じることは異なり、描いた本人の意図とも違うこともあります。そこに間違いといったものはなく、その違いを面白がりながら、それぞれの感性を大切にできるのが美術鑑賞の醍醐味だと感じました。

最後の質疑応答の時間では、ワークショップの感想や、現場での具体的なお悩みの相談など活発に意見が交わされました。

終了後のアンケートでは、
・率直に楽しかったです!絵画を通じて、こんなにコミュニケーションが取れるのか!と驚きました。
・自分自身が模造紙に向かい、ひたすらにクレヨンやペンを動かす体験を久しぶりにしました。3つの活動を終えて、かなりぐったり。頭を使うことが多い今日この頃。手を動かし、心を震わせ、普段とは違う疲れを感じたように思います。
・表現することの素晴らしさを改めて体感できたよい時間でした。大平さんの活動や大切にされている想いにすごく共感できました。今の学校は制約が強くなっていて、以前よりのびのび活動できていないと感じています。原点に戻って、今後の創作活動の進め方を考えていきたいです。
・講義の中で否定しない、という言葉に胸が痛くなりました汗(中略)本当のアート活動とはなんだろう、と考えるきっかけになりました。
・商品化できる作品の質を求めてしまう傾向になっていたんじゃないか、そもそも楽しめる環境を用意できていたのか?その視点を持てていたのかと反省しきりです。まずは、楽しむ、楽しむということを多様な側面で捉えることから、これからの日課に反映させていけたらと思いました。
といったお声をいただきました。

豊かな表現が生まれる場づくりについて、改めて考えることができました。講師の大平さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!