「文化と福祉のマッチング相談会」を開催しました

令和元年度に九州内の文化施設を対象に実施した「障害のある人たちの芸術活動・鑑賞に関するアンケート」の結果を踏まえ、8月17日、障がいのある方がより気軽に文化施設を利用し文化芸術を楽しむことができる場の構築を目的として「文化と福祉のマッチング相談会」を開催しました。

ゲストには公益財団法人大野城まどかぴあ 文化芸術振興課の杉愛さんをお迎えし、企画されている「知的・発達障がい児(者)に向けた劇場体験プログラム」についてお話いただきました。
当初はハイブリッドにて開催の予定でしたが、コロナウィルス感染拡大の状況により会場である大野城まどかぴあが閉館となったため急きょ完全オンラインでの開催へ変更となりました。
開催当日、福岡は記録的な大雨に見舞われ災害対応による欠席も相次ぐ中、文化施設関係者、福祉関係者、行政関係者など総勢32名の方に参加いただきました。

まずはじめに本講座のきっかけとなったアンケート結果の共有からスタート。2019年2月に九州内の文化施設を対象に実施したアンケート結果からは、お子さまや高齢の方への配慮は対応されているが、聴覚・視覚・精神、発達などの障がいのある方への配慮に関してはまだまだ追いついていないという傾向が見えてきます。

「障害とは“あいだ”にある」
歩けない、みえない、きこえない、文字が読めないということが障害ではなく、やりたいことを実行するための配慮がないこと、選ぶ手段がないということが障害。
当センター長の樋口がよく口にする言葉です。
文化施設の方はどこから着手したらいいのかという問題にぶつかっており、まずは福祉施設と文化施設それぞれの悩みや課題を共有できる場の必要性を感じる結果でした。

続いて、杉愛さんより劇場体験プログラムの事例報告を行っていただきました。大野城まどかぴあは、社会の弱い立場の人たちにも文化を楽しんでいただく企画を数多く行っている文化施設です。
今回紹介いただいた「知的・発達障がい児(者)に向けての劇場体験プログラム」は、大阪府の国際障害者交流センタービッグ・アイが企画し2014年から実施。2018年度から全国各地でも実施しているプログラムで、今回福岡では大野城まどかぴあが受け皿となって企画をされています。
杉さんからは、このプログラムを大野城まどかぴあで実施するにあたり出てきた課題や新たな視点について丁寧にお話しいただきました。
始めれば足りないものがわかる。できることを捜し踏み出すこと。
やるために何をしたらいいのか課題はクリアになる。
やってもやっても、課題は出てくる。
等、実体験から出てくる言葉から学ぶことは多くあります。
参加された皆さんからは

・具体的な運営プロセスも丁寧にお話しいただき、とても参考になりました。
・事業を進める上での外部とのつながりの大切さを改めて知ることができました。
・手探りながらも、真剣に障害者に向き合おうとしてくださっている姿に胸が打たれました。
・特に広報物作成の工夫のお話は、たいへん勉強になりました。

といった声があがり、お互いの情報共有を意見交換の場の必要性を改めて感じました。

次に、当センター長の樋口からは全国各地で実施されている障がいのある人たちとの鑑賞ワークショップや体験プログラムの事例、これまでの取り組みについて話をしました。
「社会との関わりから改善を見出していくことが大切」「“手助け”ではなく、一緒に冒険(体験)をするという意識を持つ」など、事例はもちろん、経験から培われた言葉が胸に響きます。

続いて、今回参加いただいた大阪府の国際障害者交流センタービッグ・アイの鈴木京子さんからも、活動事例を一部紹介いただきました。
ビッグアイでは、障がいのある方が自ら行う国際交流活動や芸術・文化活動の場として、舞台芸術に触れる機会を数多く企画されており、近年は経験から培ったノウハウを引き継いで行く活動にも力を入れています。
大野城まどかぴあの事例紹介で出てきた「知的・発達障がい児(者)に向けての劇場体験プログラム」はまさにその活動で、全国各地に展開を行っているそうです。
障がいのある方が劇場に通える機会を地元の方と一緒に作りたい。ゆくゆくは地域の課題を地域で解決する「地産地消」を目標に掲げて活動されています。

事例報告の後は、4つのグループに分かれて振り返りと共有。
その後全体での共有と質疑応答を行いました。

実は多くの文化施設が障がいのある方に対するそれぞれの取り組みを行っている一方で、福祉関係の方や当事者の方は、参加しずらい、行きずらいと感じている現実があり、それをどう解消して行くのかという話や、行っている配慮が正しいのか不安に感じる方が多いけれど、実は配慮される側もどういう配慮をされたいのかということがよくわかっていないことも多い、という話など、皆さんそれぞれの立場から不安なことわからないことを話し合う場となり、盛り上がりました。

参加者の皆さんからは

・多くの経験をベースとしたお話で、新たな発見が生まれました。
・これまでの取り組みをわかりやすく説明いただき、皆様の生き生きと活動されている様子に背中をおされたような気持ちになりました。

という声もいただき、有意義な時間となりました。
障がいのあるなしに関わらず、自分以外のことはわからないもの。今回のように混ざり合うことが、お互いを知り分かり合う場となり、いい環境と答えが出てくる。
この会の最後に出てきた言葉です。
今後も、この“混ざり合う場”を継続して積み重ねていきたいと思います。