「芸術文化と福祉がつながる相談会vol.2」を開催しました

12月22日(木)、2回目となる「文化芸術と福祉がつながる相談会」をハイブリッドにて開催しました。参加者は文化施設関係者、福祉施設関係者、行政関係者など25名。


今回は、ゲストに(株)福岡市民ホールサービス(福岡市民会館指定管理者)の梶原雅敬さんと舞台監督/介護福祉士の横山剛志さんをお迎えし、これから障がいのある人たちが、舞台で演じたり鑑賞できる機会を当たり前に選択できる環境をどのようにして構築できるか?を参加者の皆さんと考える場をつくりました。

まずは、当センターの樋口による事例の紹介からスタート。これまで関わってきた「アート×福祉」のプロジェクトの中からパフォーミングアーツに関わる事例として、公共文化施設に障がいのある人と一緒に施設館内を巡回体感する「現場体験ワークショップ」についての話をさせていただきました。障がい当事者や、公共文化施設を対象に実施したアンケートから見えてきた現状、需要や課題なども共有しながら施設の現状を踏まえた上で既に存在するバリアをどう解消していくのかという点について学び、考える場となりました。

次に、福岡市民会館の館長である梶原さんより、福岡市民会館の主催事業である「コココのダンス」の事例についてお話をいただきました。
「(コ)の日(コ)の時(コ)どもと共に」というサブタイトルのこの企画は、劇場体験を行うことが稀な医療的ケア児(障がい児、重度の障がいを抱えた子ども等)が舞台に立ち、遠くから子どもたちを見る機会が中々ない家族が離れた客席からその姿をみるという非日常的な体験を劇場という非日常的な空間で体験することを軸としてスタート。

病気や障がいとともに成長している子どもたちが、大人ダンサーや子どもダンサーと出会い、一緒にファシリテーターに導かれ、それぞれの表現方法で個性豊かな世界をつくり出すダンスイベントとして毎年福岡市民会館にて開催されています。

福岡市民会館は築60年という歴史があり、福祉の目線でハード面のバリアがとても多い建物で、車椅子よりも重く大きなバギーに乗った出演者が多数参加されているこのイベントが一体どのようにして行われているのか。そもそものきっかけから手探りでスタートした環境づくりについて、関わっていく中で生まれた人の変化も交えながら丁寧にお話いただきました。

色んな方に会館を使ってもらいたい。劇場がみなさんがお出かけする場所であってほしい。という思いでスタートしたこと。最初は正直喜んでいるのかどうか、感情がわからなかった参加者とのコミュニケーションが取れるようになったこと。会館のスタッフはもちろん親御さんや福祉関係者など関わる方が変化していったこと。など、梶原さんからお話しいただくありのままの言葉は、ダイレクトに心に響きます。

【コココのダンス関連動画】
コココのダンス2020 https://youtu.be/pFJfCQa1By8
コココのダンス2021 https://youtu.be/smwuZCaZdTM

後半は「コココのダンス」に舞台監督である横山剛志さんにも加わっていただき、梶原さん・樋口と共にトークセッションを行いました。
横山さんは舞台監督と介護福祉士という2つの肩書をお持ちで、「コココのダンス」では舞台監督としてだけでなく、舞台と福祉をつなげる役割も担われていました。
梶原さん曰く「福祉のことは全くわからない舞台畑の人間にもわかるように間に立って通訳をしてくれた」とのこと。この“繋げる役割”という部分がポイントです。
『バリアフリーにしてくれ』と漠然と一方的に言っても『難しい』と跳ね返されてしまう。舞台のテクニカルスタッフとして役者を舞台から客席上空まで飛ばすことの出来る人たちが、車椅子に乗った人を劇場入口から舞台まで運べないわけがないと思い、あの手この手で説得し続け色んな事に対応してもらうことができた。と横山さん。
舞台スタッフとの橋渡しはもちろん、福祉側の方からの理解も得なければならないということで実際に現場で苦労した話や切り抜け方などさまざまな話で盛り上がりました。

参加者の方からは
・「こうやれば成功する」というようなお話ではなく、長年続けた中での変化を感じられながら、現在進行形での試行錯誤の様子を教えていただき、自分ごととして捉えることができました。
・同じような悩みをお持ちの方がいらっしゃることや、そこを解決された方のご意見をお聞きできて、大変参考になりました。
等の感想をいただきました。

文化施設を対象に行ったアンケートでは「障がいのある方々の発表の場の創出の機会を持ちたいが、ハード面の問題が多く不安が多い」という声が数多く寄せられています。この状況を受け、今回はハード面の問題が多く存在する福岡市民会館でその問題をクリアしながら福祉の目線をうまく取り入れて開催されている事例として「コココのダンス」を紹介いただきました。
お話からはハード面をいかに解消していったのかということはもちろん、「コココのダンス」を通してを開催することによる様々な変化についてもお伺いすることができました。利用の幅が広がりに加えて、関わる人の変化を感じれる事業だと感じました。

今後も、障がいのある人でも利用しやすく、お出かけの選択肢にホールでの観劇やコンサートが入ってくるような社会を目指して色々な場を作っていきたいと考えています。
引き続き、どうぞよろしくお願いします!