アートサポーター養成講座「レクチャー&相談会@筑豊」を開催しました

障がいのある人たちのアート活動をサポートする地域のネットワークを構築し、さらに地域に根ざした活動が継続的に行われることを目的に開催しているアートサポーター養成講座「レクチャー&相談会」。
県内の各地域で活動する福祉事業所の方をゲストにお招きし、アート活動を行う環境づくりをはじめ、地域へのアウトプット方法などについてお話しいただき、ゲストのお話からの感想共有や参加者の皆さんからの相談、意見交換を行っていきます。

9月23日(木・祝)、筑豊地区にてアートサポーター養成講座「レクチャー&相談会」を開催しました。
参加者は、福祉事業所や医療関係者、教育関係者、学生などさまざまなバックグラウンドをお持ちの方が16名。
豊前市で障害福祉サービス事業所「ハミングバード」を運営されているNPO法人平和の種代表恒遠樹人さんをゲストにお迎えし、創作活動を始めるにあたっての環境づくりや地域へのアウトプット方法、事業所でアート活動を行う目的、取り組みについてお話いただきました。

この日は飯塚の会場にてハイブリッドで開催の予定でしたが、福岡県の緊急事態宣言発令により会場が閉館となりオンライン(Zoom)のみの開催となったため、配信場所を恒遠さんの活動拠点である「ハミングバード」へ変更。
どのような環境で日々の創作をされているのか映像を通してレポートする時間も盛り込みました。

「ハミングバード」は2019年10月に開所され、創作活動を支援の柱に掲げて活動されている事業所です。豊かな緑の中にある廃校木造校舎を活用したスペースには、スタッフがそれぞれハミングバードで“やりたい事“を担当して活動している4つのセクション(カフェ、ショップ、ファーム、ラボラトリー)があり、日々楽しみながら運営されています。
今回は活動現場からの配信ということで、終始和やかな雰囲気が漂う相談会になりました。

「レクチャー&相談会」、まずは恒遠さんのお話からスタート。
実際に障がいのある人たちの芸術活動をサポートされている福祉事業所の現場の声を、ということで、独自の事業所を立ち上げたいと考えていた頃から立ち上げるまでのお話、立ち上げるまでの奇跡のような出来事やお金の話から、現在抱えている課題のことまで自らの実体験と事例を交えながら詳しくお話しいただきました。

締めの言葉として出てきた「福祉はイソップ童話の『北風と太陽』の話に似ている。強制ではなく、自分から主体性を持って何かを取り組むことの手伝いをするのが福祉であり、福祉には絶え間ないリフレーミングが大切。アートはこのリフレーミングにうってつけの手段だと思っている。」
※リフレーミング:ある枠組みで捉えられている物事を枠組みを外して違う枠組みで見ること。
というお話からは、こういった実体験に基づいて築かれて来た恒遠さんの考えが、「ハミングバード」を開所・運営する上での軸となっているのを感じました。

その後はお待ちかねの施設レポート。
日々の創作を行っているアトリエやカフェなどを巡りつつスタッフの皆さんのお話を伺いつつ、館内ツアー。残念ながらこの日は休日で利用者の皆さんはいらっしゃいませんでしたが、施設に漂う風通しの良い空気と懐かしくのどかな雰囲気からは皆さんがのびのびと創作活動を行っている日常が想像できました。

続いて当センター長の樋口からは、障がいのある人たちとの芸術活動の歴史や全国での事例を紹介。話の中で出て来た“アートは目的ではなく手段”という考えは恒遠さんもお話されており、“手段が目的化していないか”をという問いを持ちながら活動することの大切さを感じました。

後半はグループディスカッションを行い、意見交換会・相談会。
恒遠さんが行われている地域との交流、地域で活動するということに関する質問から始まり、日々の創作活動に関する相談、また、福祉の道に進もうとされている学生さんからのこれからに関する質問などとても盛り上がりました。

参加された皆さんから

●都市部でしかアートの活動は無理かと思っていたが、そうでないことを知り励みになった。
●利用者のできないことを全部スタッフがやるのでなく、利用者同士で補いながら創っていく関係と環境がすごくいいなと思った。
●大学の授業やテキストの勉強だけではなく、実際に現場を見て学ぶことの重要性を感じた。

といった感想をいただき、後日参加者同士が繋がってお互いの情報交換を行う動きもあり、とても有意義な会となりました。
このような会は今後も定期的に続けて行きたいと考えていますので、引き続きよろしくお願いいたします。